【叶家のうわさ】親子をつなぐ女将・前編
2025.06.24
久しぶりに会う家族ってちょっと気まずい時もありますよね?
でも叶家の女将にかかればそんな雰囲気も吹き飛ぶらしいのです・・・。
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ある春の日、一人の若い男性が「一泊だけ」と、ふらりと叶家を訪れました。
どこか寂しげな表情の彼に、女将・ツネ子は声をかけます。「今日は何か、大事な日なんですか?」
男性は少し戸惑いながらも、ぽつりと話し始めました。
「実は…十年以上会っていない父と、今日ここで会うんです」
両親の離婚を機に疎遠になっていた父と、久しぶりの再会。けれど、どんな顔をして話せばいいのか、心はざわついたまま。
そんな彼に、ツネ子はお茶を淹れ、静かにこう言いました。
「心配しなくても大丈夫。親子ってのは、会えばわかるもんですよ」
それからしばらくして、父親らしき男性が玄関に現れます。どちらも、少し気まずそうに会釈を交わすだけ。
けれど、そこからツネ子が、まるで舞台の演出家のように動き出したのです。